はじめに
怪我とは我を怪しむと書く、全く予想もしなかった所で突如発生する。
安全第一、相互点検、絶対に怪我を出すなと徹底させている最中に怪我が起きてしまった。すると続けて、あちらでもこちらでも災害の連発だ。「怪我は」一度起こると何故連発するのだろうと天を仰いで嘆いたことのある人も多いと思う。
この時私は、工場の中に怪我を出す雰囲気を感じた。怪我を絶滅するには、このような雰囲気が絶対でないような「工場革新」「企業革新」が必要で、これを「企業戦略」の一つとして取り上げて長期にわたって着実に作り上げていくことの必要性が分かった。
そして、その怪我を出さないようにする戦略が実は会社の発展の基礎を作る施策そのものであることに気がついた。
「ポルフ」「工場革新のための実践的プログラム」はまさに怪我を絶滅するための手段であり、企業活性化の基礎作りでもある。
ポルフは20の実行指針から成り立っているので、その一項目一項目と安全とのかかわり合いから説明する。
- 4S 【ポルフ4Sは仕事をやりやすくする4Sである。】
- 無理な姿勢は一切なし。腰を曲げて行う作業も無くなるように改善されている。
- 区分明示・直角、平行が徹底しているために、“どこにあるのかな?”と探す時に起きる怪我は一切無くなる。
- 通路明確、壁際スッキリで工場内では、交通事故が無くなっている。
- 工場の中は美しさだけではなく「 機能美」が感じられるようになるため、怪我を発生させる要素が一切無くなっている。
- 職制の整流化・目標管理 【トップダウンとボトムアップのドッキング】
- 社長の考えと第一線の従業員の考え方がぴったり一致する。ポルフでは本当の意味での目標の共有化が出来、社員一人一人が自分は何をやれば良いのかが分かり、一途に仕事に打ち込む事が出来る。
- 良い意味での競争意識が生まれて、常に適度の緊張感が生まれている為、だらりと気をゆるめた瞬間に起こる怪我の発生が無くなる。
- 小集団活動
- ポルフの小集団活動は、職制の長からの心からなる支援を受けた自主活動によるグループ・サークル活動である。そのため、他に例のないくらい活性化している。
そのグループ・サークルを、ヒヤリ・ハットの具体的なテーマをあげ、改善コーナーを利用して、道具を作って対策を実行している。
- 中間仕掛かり減少
- 仕掛品の山の中で仕事をしていては当然怪我が発生する。
- ポルフの仕掛かり減少は数値に裏付けられた全員参加の力を結集し無理なく減少させ、広々とした職場の中で働くことが出来、あるいは、空いた所に休憩所を作るなど、休憩時間にゆっくり身を休め、怪我と決別した職場づくりもある。
- 発注点管理などで欠品をなくし、イライラによる怪我が無くなっている。
- 段取り替え・迅速化技術
- ポルフのシングル段取りは、段取り替えの時間を10分未満の短時間で行えるというだけではなく、調整を無くして一発目から良品が出来るように工夫されている。
- そのために、カン・コツなどの難しい作業をしないで、誰がやっても簡単に出来るようにして工夫されている。そこで、怪我を起こすような危険な作業のすべてが改善しているので、怪我を出す要素が完全に取り除かれている。
- スタッフはシングルファイルによって1分未満で必要書類を見つけ出す事が出来る。
そのため、スカッとした頭で仕事が出来、イライラからくる怪我の発生を防止している。
- 作業改善 【タテの改善・ヨコの改善】
- ポルフの作業改善はタテの改善(人・機械の稼働率を上げる改善)とヨコの改善(動作を楽にする改善)とを掛け合わせて楽に生産性倍増を達成する方法で、一つ一つの作業の改善だけでなく、材料から完成品までを連続して、それらをつなぐ部分までを改善していく方法であるため作業の切れ目に発生する災害を防止し、リズムに乗った作業が出来るようになっている。
- ポルフモデル机・モデル作業台を全職場に展開していき、最も作業し易い姿勢で常に働く事の出来る仕組みを作っているので、怪我の出る要素が絶滅されている。
- 監視作業ゼロ 【不良ゼ口への監視作業】
- 機械を見ていないと不良が発生する、あるいは、機械が故障する。
このような時には常に機械を見張っていて、異常を感じたら即対応し、不良、故障の発生を最小限にする。「即停止だ!」その瞬間に怪我が発生する確率が高い。
- 不良ゼロ、監視ゼロ、ポルフの監視作業ゼ口は、人がついていなくても、又、見てなくても安定した良品が完成し、作業が終わったら、その機械は自動的に停止するように機械を整備して行くもので、この状態が出来上がると人は機械から離れられるので、怪我を起こす要素が無くなっている。
- 間接部門では、職制細則(機能展開図)を基に1ページ標準が総ての業務にわたって作られており、その手順に従って作業を進めばミスが無くなるようになっている。ミスを発生させた時の心の動揺による災害を防ぐごとが出来る。
- 職場間のつなぎ 【前後工程の助け合いが生まれる職場間のつなぎ】
- 職場と職場の問には常にトラブルを発生させる要因が満ちあふれている。このトラブルのよる怪我は意外に多い。
・後工程はお客様。後工程との間に物(部品等)も移動する必要のあるところには“店”を作り、お客様の買いやすい店として、店長を決めて、後工程に喜ばれるサービスをする。つまり、余分に作らず、欠品無し、区分明示し、探さなくても積み替えないでも買っていけるようにし、一切のトラブルを無くし、その間に起こる可能性のある災害を絶滅する。
- 間接部門はポルフ独特の金魚鉢ミーテングによって営業→開発→設計→計画→資材→製造→品質 などの職場間に発生するトラブルをすべて明るみに出し、協力して解決する
- 報・連・相がガッチリ確立し、各部門間の意志疎通の悪さからでる大きな災害などを未然に防止する。
- 機械設備の保全
- 機械設備の不具合による災害は多発しており又、大きな事故も多い。
- ポルフの機械設備の保全は全員参加である。まず、自分の使っている機械に対しては、3悪(清掃不良、給油不良、誤操作)を追放し、3悪による故障ゼロにする。この間に作業者と機械との間にスキンシップと信頼関係が生まれ、機械を仲間として見る習慣が出来て来ることによって、災害を未然に防止することが出来る。
- 作業規律
- ポルフの作業規律は数値で管理され、その数値の向上には減点法は、一切使わず、常に加点法を使っている為、全員の協力が得られ、今迄経験した事の無いすばらしい“職場をさわやかにする作業規律”が生まれて来る。
- 職場がさわやかになれば災害はなくなる。また、安全服装・朝の挨拶、キビキビとした体操、報・連・相の徹底などにより怪我を出す原因を根本から無くしていくことが出来る。
- 品質保証体制
- 不良が出ると怪我が出る。不良と怪我は表裏一体のものである。
ポルフの品質保証体制は、不良のでる根本原因を網羅したポルフ独特のチェックシートにより不良、クレームを絶滅する。
ポルフ大賞・銅賞を取った会社は既に20数社あり、それらの会社は不良、クレームを1/5以下を達成している。
- 不良のない職場に災害は無し
- 外注体質強化支援
- 外注工場から納品された部品に欠品があったり、不良品が混入したりして納期が遅れ、そのばん回策のため混乱が生じてその為に、災害が発生した事例がある。内外の安定した関係の上で、内外共に流れるような生産を行い災害を防ぐ。
- 宝の山の案内図
- 付加価値のない作業はすべてムダ(運搬・歩行・用談・積み替え)そのムダの作業中に発生する災害は、付加価値を生む作業中に発生した災害よりも多い場合がある。
- 宝の山の案内図は徹底的にムダを取り去る大作戦である。ある会社では付加価値のある実作業の全作業に対する割合が倍増したところもある。
- 怪我を発生させる原因となっているムダを無くして災害の原因を取り去っているのがポルフである。
- 改善コーナー
- “自分達の改善は自分達の手でするのが最良の方策”
例えば安全対策のアイデアが生まれても、それを作るための手続きが複雑であれば先送りにされてしまう場合がある。その間に災害が起きたらどうなるか!
- ポルフの改善コーナーは誰が何時来ても改善の物が作れるコーナーでそこには自由に使える設備と工具類、そして、必要な材料部品が自由に使えるようになっている。
ヒヤリ、ハットで気が付いた改善は、即、自分の手で改善コーナーで作り、災害が未然に防止されている。
- 多能化
- 応援に行った時に怪我をした。ラインの中でいつもと違う作業を割り当てられたので怪我をした。このような話は良く耳にする事がある。
- ポルフ多能化では社員の意志をペースにした計画的な多能化を常時行っており、必要な多能化は既に終わっているところも多い。
- ポルフでは技術錬磨表を使って多能化を進めており、多能化のみではなく一人一人の技術を上げることに日々努力している。そのため人員異動による災害は起きていない。
- 工程管理
- ポルフ独特の目で見て分かる職場づくりを基に今日の仕事、明日の仕事の明示等、変化対応の製造体質を作ることによって飛び込み仕事に対しても混乱なく作業をこなし、作業の混乱による災害をなくしている。
- 能率管理
- ポルフでは直間共に数値で裏付けされた能率管理を実施している。それによって、昨今非常に多くなった仕事の増減に対しても数字で裏付けされた標準時間を利用して作業の平準化が図られており、常に時間当たりで平均化した仕事を配分する事が出来るようになっているので、仕事の増減による作業の乱れが無くなっており、作業の乱れからくる災害の防止に役立っている。
- マイコン利用
- 良い物を安く、早く、安全に作るためのあらゆるものにマイコンが利用されており、安全確保の大きな力になっている。
- 省エネ・省資源
- 水、電力、油、材料の節約に全社を上げて取組んでいるポルフはそのこと自体の中に災害を防止する力が働いている事になる。
- 新技術・固有技術
- 会社の将来の発展を左右する新技術はまず安全第一、それが実現される新製品が会社の
将来を保証する売れ筋の商品に発展して行くものと考える。
あとがき
怪我の出る雰囲気は生産活動のすべての領域から発生するものである。
ポルフ20項目がムラ無く進められて行けば、そして世界一の企業体質を目指していけば、それが世界一の安全な職場となっていくことは間違いない。
ポルフで20項目を進めていく過程でここに書かれた「ポルフと安全」を頭の中に入れて進めていくと、より早く安全で明るい職場づくりが完成して行くことは間違いない。
「ポルフを進めている企業に災害無し」